柔道が初めて採用された東京オリンピックは1964年。今から40年以上前だ。ここから現在までの間、日本柔道は常に世界のトップレベルであり続けている。
「柔道は日本のお家芸だから、当然」か?
かつてバレーボールや器械体操は、日本のお家芸と言っても良い時代があった。現状しか知らない世代には信じられないくらい、日本は強かった時があったのだ。
相撲のワールドカップが開催されたら、日本は優勝できるかどうか。
長きに渡り世界のトップであり続けるには、簡単なことではない。そうなるには、それなりの根拠があるのだ。スポーツライターの金子達仁は、そのひとつに団体戦の存在を挙げている。
日本の小・中・高校スポーツにおいては、ほとんどの大会がトーナメント形式で行われる。負けたら終わり、特に最終学年の夏の大会では、負けた時点から半年ほど試合から遠ざかってしまうことも珍しくない。負けた経験を活かしにくい状況だ。
しかし、柔道なら、個人戦で負けても団体戦で戦うチャンスが与えられる。団体戦では自分が負けても他のメンバーが勝てば、次の試合がすぐにできる。
柔道と同じような形式で学校単位の大会が行われる競技には、空手・剣道などの格闘技以外に、テニス・卓球などの球技もある。これらは、バレー・バスケットといった団体競技、また陸上競技やゴルフといった団体戦があまりポピュラーではない個人競技よりも、日本の世界における強さの地位は、総じて高いと感じられる。
個人競技の団体戦は、人を成長させるのだ。
特に若い世代にとって、その効果は大きい。
「自分の勝敗に、チームの勝敗が掛かっている」というプレッシャーは、勝つ喜び/負けた悔しさの大きさに比例して、人を成長させる。
「さっきは自分の負けをみんなが勝ってフォローしてくれた。次はオレが勝ってみんなに恩返しするぞっ!」という気持ちになれれば、それだけでも大きな価値があるのだ。
2005年の女子世界Jr.に参加した小林海咲、酒井佑季、武本恵美、田尾郁子、佐治緑は、団体戦の経験をほとんど持たないで(日韓合宿のインターポートマッチくらいか)この大会に臨んだ。結果は20カ国中15位。評価は微妙だが、スコアから推測すると、もっと上位に行けるチャンスは充分あったようだ。
1年半後、同様の主力メンバーで戦った2007アジアJr.では、3位という好成績を残している。その要因はいろいろなものが複合されるのだが、団体戦の経験を積んでいたことを挙げても良いのは異論ないだろう。
世界Jr.でチームの勝敗が掛かった大事なところで、あと一歩で勝利を逃した酒井が、アジアJr.では同様の局面でチームの勝利に貢献したことは記憶に新しい。
その背景を、「世界Jr.団体戦で悔しい思いをしたから」とするのは乱暴すぎるだろうか。
もちろん、当人や周囲の努力が最も重要なのだが、日常的に選手の練習に付き合えない立場の者にできる最大の協力のひとつが、団体戦の経験を積ませることなのだ。
(つづく)