福井裕太 bt 清水孝典 3-9 9-2 9-5 6-9 9-4
「カモーン、タカノリ!」
昨年の全日本準々決勝(vs福井)、決勝(vs松本)と同じ言葉を、思わず叫んでいた。だがその意味は大きく異なる。
昨年は、「オマエの実力はそんなものじゃないだろ? お願いだ、このまま負けるなんてカンベンしてくれ!」という悲痛な叫びだった。私と同じ気持ちになった人は、ごく少数だったはずだ。
今回のは、福井を応援していた者をも共感させる力を持つ言葉だったに違いない。気迫のこもったパフォーマンス、つまり「それも拾えちゃうの?!」と唸らずにはいられない執拗なピックアップを清水は披露する。
こんな気持ちになったのは、2005年の全日本以来かもしれない。観るもの全ての胸を打つ、素晴らしい気迫だった。インターバルを含めたこの約1時間半は、石渡とのマラソンマッチ(2時間半)をよりも遙かに密度の濃い時間だった。
「だから良かった」と言えるのは、アマチュアの場合である。結果を出せなかった試合を讃えるのは、プロに対して失礼な行為なのだ。この試合が準決勝で、数時間後に松本との決勝が控えていたとするならば、たとえファイナルゲームで逆転して勝ったとしても優勝は難しかっただろう。
清水に贈るべきは、反省と今後の対策を講じることを促す言葉である。
神奈川オープンで得意のドロップを清水に読まれ、前へのストレッチを余儀なくされ苦杯を舐めた福井は、前からのショートボーストを多用する戦術を取ってきた。
1st、4thゲームで集中を乱したが、それは清水のパフォーマンスによってもたらされたものではなく、福井の勝手な自滅だった。
この試合に勝つために清水に足りなかったのは、勝負の流れを読む力だったのではないか。「こうゆうもつれた試合、(勝負どころを適格に掴み利用することに長けていた)潮木仁、渡辺祥広なら勝っちゃうんだけどなぁ」と私は3rdゲームあたりから感じていた。清水はいつでも全力投球、全打席フルスイングだった。
ただ、全日本まで約半年の今、福井に負けたのは良いことだった。決して負け惜しみではなく、心からそう思える。そんな素晴らしい両者のパフォーマンスだった。